ババアは1日にしてならず

少女がババアになるまでの日記

本当のことってなあに

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「ねえ先生」

黄色人種のはずなのにその生徒の顔は自分の白衣より白く見えた。日当たりの悪い生物室の窓へ珍しく日が射していたからだろうか。生徒はたまに私のところに意味もなくやって来る。教師と生徒の関係など点数をつける側とつけられる側の二極構造に過ぎないのだが、この生徒は成績に興味がないらしく、授業はいつも寝ているし自分の興味がある科目しか勉強しない。正直でわかりやすい生徒で、教師と対等のコミュニケーションを求めるようだった。生物の教師である私に興味があるのは生物の成績がよくなってきたころから気づいていた。生徒はこうしてたまに私に点数にならない質問をしに来る。コミュニケーションを求めて。

「先生、四月馬鹿はなにか嘘つきましたか。」

「いいえ、その日は仕事でしたから、嘘をつこうものなら首が飛んでましたね。」

「仕事じゃなかったら嘘ついてたかもしれないんですね。友達のみんなは嘘ついてました。くだらなかったです。いつも難しい嘘をついてるくせに、その日だけかんたんな嘘をついて、まるでわかりやすい人間であるかのように振舞うんです。」

「それは本当にわかりやすいですね。悪いことを考えているけど、天真爛漫に思われたい、そう目論んでいることが直ぐにわかるではありませんか。ある意味でその人の目標は達成されているのでは。」

「そうでしょうか。もしかしたらその裏があるかもしれません。裏かと思ったらまたその裏、その裏かと思ったらまたその裏、意表を突いて表、なんてこともあるかも…こうして終わりのないことを考えてしまうんです。他人のことなど考えてもわかるはずないのに。」

「考えるあなたは、人の気持ちを敬うことができる素敵な人ですよ。」

「違います。人の気持ちを敬っているつもりで、みんな自分の気持ちを尊重してるだけなんです。だって、自分の気持ちしか知りようがないもの。自分と同じ気持ちを持ってる人しか救えないんです。だからマジョリティの価値観を持つ人は好かれます。」

「あなたは人とは変わった考えを持つけれど、大勢の人に好かれているように見えますが、それはどうなんですか」

「それはみんなが私のことを見下しているからです。」

「あなたは見下している人に好意的にするんですね。」

「…そういうことになりますね」

生徒は笑った。白い歯が見えた。昼休みの騒がしさが生物室には届かない。別世界の時間が流れていた。

「先生、考えていたら本当のことっていつかわかりますか。」

透明標本を眺めながらの質問だった。私は美しい瞳で槍を刺された。マルバツをつける立場の私に、それを聞くのか。

「…私も未だわかりません。」

「先生でもわからないのなら、私にわかるわけないですね。…ああ、サクラソウが咲いてる」

私が植えたサクラソウが花開いていた。実はもう私の目は老い衰え、色の違いは殆どわからない。しかし生徒にはわかるのだろう。生徒の目にはあまりにもたくさんの色が鮮明にうつり、どこからどこまでが赤なのか青なのか、区別ができないのだろう。その若さを抱えながら、これから苦しむだろう。私はかつてないほど自分の老いを実感させられた。生徒の前では私は影になってしまう。物事を2つに分けて考えるようになったら、社会では生きてゆき易い。その大人の賢さを恥じるべきだ、と思った。

昼休みは終わり、私は授業へ、生徒は寝るために部室へ行った。授業ではいつものように饒舌に喋ることができなかった。自分の言っていることすべてが間違っているかもしれない気がしてきた。私も聞きたかった。一体何が本物なのか。どれが本当の色なのか。

 

 

だらだら長くなったので辞めます。たまごです。アルバム出します!がんばります。XFDはやり方わかんないのでたぶん出しませんが、みなさんどんどんイベントに来てください。曲作ってたら高校のころ好きだった先生を思い出して、生物教師と生徒の会話を書きたくなって、ガーって書いてしまった。エイプリルフールは苦手ですが、そのときついた嘘が来年のエイプリルフールまで叶わないっていう都市伝説はロマンあって好きです。恋人に「別れよう」って嘘つきました。ごめんなさい。でもほんとのことってマジでわからないですよね。最近そればっかりです。何かを断言することってめちゃくちゃ恥ずかしいことなのでは?とすら思います。かもしれない運転していきましょう。どっこいせ〜